白内障とは、目をカメラで例えるとレンズにあたる水晶体が白く濁った状態です。原因は加齢によるものが大半ですが、他にも先天性や外傷、アトピー、糖尿病、薬剤や放射線が原因となる白内障もあります。白内障が進行すると視界が全体的にかすむ、視力が低下する、日差しや夜の車のライトをまぶしく感じる、光が滲んで見えるなどの症状が出てきます。

白内障
白内障
白内障とは、目をカメラで例えるとレンズにあたる水晶体が白く濁った状態です。原因は加齢によるものが大半ですが、他にも先天性や外傷、アトピー、糖尿病、薬剤や放射線が原因となる白内障もあります。白内障が進行すると視界が全体的にかすむ、視力が低下する、日差しや夜の車のライトをまぶしく感じる、光が滲んで見えるなどの症状が出てきます。
白内障の治療は基本的に手術加療となります。ただし、病状初期の場合や、諸事情により手術ができない場合には、点眼で進行を抑える治療もあります。白内障の手術時期について決まりはありませんが、実際に患者様ご自身が日常生活に不自由をお感じになられたタイミングが手術の時期ということになります。
白内障の手術は黒目の上を2から3ミリ切開し、超音波で濁った水晶体を破砕、吸引したのちに同じ傷口から直径6から7ミリの眼内レンズを挿入します。手術自体は目薬の麻酔で痛みはほぼ感じず、通常5分から10分程度で終了しますが、白内障が極度に進行している場合や水晶体の支えが弱い場合など患者様の状態によって手術時間が伸びる場合もあります。眼内レンズには単焦点と多焦点レンズがあり、患者様の生活様式や希望によって選択します。当院の手術は日帰り手術のみで、入院手術は行っておりません。家庭の事情やお体の事情で入院手術をご希望の場合は入院設備のある連携病院に紹介させていただくことも可能ですのでご相談ください。
白内障手術時に眼内に入れるレンズは、一般的には単焦点の眼内レンズを使用します。その場合、手術後は調節機能がなくなるため、焦点(ピント)が合う距離は遠く、中間あるいは近くの1点になります。手元と遠方両方ともはっきりと見えるわけではありません。このため、焦点が合う距離以外は眼鏡が必要になります。
この欠点を補うために登場したのが多焦点眼内レンズです。多焦点眼内レンズには焦点の合う距離によって以下の種類があります。
『遠く』とはテレビや運転、スポーツに適した1m以遠
『中間』とはパソコンや料理などに適した 60センチ程度
『手元』とは読書やスマートフォンなどに適した30から40センチ程度を指します。
1、遠くと手元にピントが合う多焦点眼内レンズ(2焦点レンズ)
2、遠くと中間にピントが合う多焦点眼内レンズ(2焦点レンズ)
3、遠くと中間と手元にピントが合う多焦点眼内レンズ(3焦点レンズ)
4、焦点拡張型多焦点眼内レンズ
焦点拡張型眼内レンズとは従来の多焦点眼内レンズが用いてきた回折という原理ではなく、波面制御技術により焦点距離を拡張した最新の眼内レンズで光のロスがなく暗所でも明るく、従来の多焦点眼内レンズの弱点であったハロー、グレア、ワクシービジョンなどが少ないレンズです。夜間の運転には適しており、遠方と中間は単焦点レンズと同等のコントラスト感度を維持出来ますが、3焦点レンズと比較して手元の見え方は弱くなりメガネが必要となる可能性があります。
多焦点眼内レンズを選択することで日常生活の大部分を眼鏡なしで過ごせるようになることが期待できます。
現在当院で選択可能な眼内レンズは以下の通りです
1、遠くと中間と手元にピントが合う多焦点眼内レンズ(3焦点レンズ)
・AMO社オデッセイ(Tennis Odyssey)
・Alcon社パンオプティクス(Clarion PanOptix)
2、焦点拡張型眼内レンズ
・AMO社ピュアシー(Tennis PureSee)
・Alcon社ビビティ(Clareon Vivity)
厚生労働省の通達により2020年4月より、多焦点眼内レンズを用いた白内障手術は保険診療+選定療養として行われることが決定しました。つまり健康保険での白内障手術に加えて別途下記眼内レンズ料金が発生します。
3焦点眼内レンズ(オデッセイ、パンオプティクス)
片眼330,000円(税込)
3焦点眼内レンズ(オデッセイ、パンオプティクス) 乱視矯正用
片眼350,000円(税込)
焦点拡張型眼内レンズ(ピュアシー、ビビティ)
片眼330,000円(税込)
焦点拡張型眼内レンズ(ピュアシー、ビビティ) 乱視矯正用
片眼350,000円(税込)
しかしながら多焦点眼内レンズも万能ではなく、いくつか注意点があります。下記の点を十分ご理解いただいた上で多焦点眼内レンズを選択してください。
1、コントラスト感度の低下・・・多焦点眼内レンズは、光を遠くと近くに分けるため、単焦点眼内レンズと比べ遠く・近くともに少ない光(30~40%程度)で見ることになります。そのため単焦点眼内レンズに比べ、全ての焦点距離においてコントラスト感度が低下します。つまり弱い光量で見るため、全体的に見え方の質(画質)が単焦点眼内レンズに比べて低下します。
2.グレア・ハロー現象・・・多焦点眼内レンズによって光を2つあるいは3つに分けるときに散乱光が生じます。そのため特に暗所で眩しさを感じたり、光の周辺に輪が架かって見える現象が起こります。次第に慣れて眩しさも軽くなってきますが、特に手術後の数ヶ月は、夜間の車の運転等には特に注意が必要です。
3.見え方の慣れに時間がかかる・・・多焦点レンズでは脳の視覚野という部分に、遠く、近くの2つあるいは3つの映像が同時に届くため、それを脳が今どちらを見ているのか判断しながら見ることになります。日々ものを見ることで脳が順応し、より鮮明に見えるようになりますが、それには早い方で1か月、時間のかかる方は6か月ほどかかります。特に近くの見え方には慣れるのに時間がかかる場合があります。また、暗い所では手元がはっきりとは見えません。その場合ライトで照らすなどの工夫が必要です。
4.waxy vision・・・稀にですがwaxy vision(モワッとした見え方)により 遠方も近方もよく見えず,どうしても多焦点眼内レンズの見え方に慣れないという場合もあります。
5.眼鏡が必要となることがある・・・多焦点眼内レンズによって,完全に眼鏡が不要になるわけではなく、必要に応じて眼鏡を使用していただく場合があります。多焦点眼内レンズは、20代のときのような見え方に完全に戻すというわけではありません。日常生活のほとんどの場面で眼鏡なしで生活されている方は約 7 割と報告されています。特に長時間読書をしたり、パソコン作業をするときなどに眼鏡が必要となることがあります。その他、乱視のある方は術後眼鏡装用が必要となることがあります。
6.乱視の影響・・・多焦点眼内レンズの利点を最大限に引き出すには、可能な限り乱視が少ないことが条件です。具体的には0.75ジオプター以上の乱視をお持ちの方は乱視矯正用の多焦点眼内レンズをお勧めしますが、通常の多焦点眼内レンズよりも高額となります。また手術によって乱視が惹起された場合は裸眼での見え方の質が低下することがあります。
注)どうしても多焦点眼内レンズの見え方に慣れない場合は、術後に単焦点眼内レンズへの入れ替えが必要になることがあります。ただし、眼内レンズ入れ換え等の再手術については保険診療とならず、自費治療となります。
上記のような多焦点眼内レンズの特徴に加えて、手術に際しての注意点として下記をご理解ください。
1.手術前に想定した術後の屈折値(度数)が予定とずれる場合があります。眼内レンズの度数は、眼球形状の計測結果をもとに経験式で計算して決定しているからです。度数がずれた場合は遠くも近くも見えにくくなる場合があり、ご希望があればレンズ入れ替えを行いますが、別途自費費用がかかります。
2,手術中の合併症(水晶体嚢の破損、硝子体脱出、Zinn小帯断裂および脆弱)によって予定していた多焦点眼内レンズを挿入できず、単焦点眼内レンズを挿入する場合があります。両眼手術の場合、先に手術する眼で単焦点眼内レンズを挿入することになった場合は、もう片方の眼も単焦点眼内レンズを挿入することとなります。この場合は両眼とも保険診療となります。先に手術した眼には多焦点眼内レンズを挿入し、もう片方の眼の手術時に合併症にて単焦点眼内レンズを挿入せざるを得なくなった場合は左右で見え方の違和感が生じる場合があり、術後に眼鏡装用が必要となります。違和感に慣れない場合は先に手術した眼の眼内レンズを単焦点眼内レンズに入れ替える必要があります。この場合も費用は自己負担となります。
3.術後眼内レンズの偏心・・・術後に水晶体嚢の収縮により眼内レンズが眼の中で偏心した場合、多焦点眼内レンズが機能しない場合があります。
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